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鬼鬼ライスの正体

 もうすぐ節分である。節分といえば「鬼」である、というのはいくらなんでもかなり気が早いけれども。

 学生時代に一人暮らしをしていた調布市の隣に府中市というのがある。かつて、在籍していた合唱団の練習が府中市内の文化センター(公民館、府中市では文化センターとか地域センターとか呼んでいた)を利用していた関係で、よく、府中市内の飲み屋で仲間たちと管を巻いたものだ。

 今でもあるかどうか、わからないが「樽平(たるへい)」という居酒屋が府中市内に何軒かあって、確か、山形県の地酒に「樽平」というのがあるので、その関係する店だと思うのだが、とにかく、安くて、学生の身分には大変、ありがたかった。 非常に健全な店で、夜の10時には店じまいをしてしまうのだが、9時30分を過ぎるあたりから、その日に仕入れたり、作り置きしておいたつまみを「これ、サービスですから」と、適当にカウンターに座っているお客にちょこちょこと出してくれるし、その日に蓋を開けてしまった、一升瓶やウイスキーも「どうぞ、飲んでください」とドーンと出してくれる。だからといって、9時半ごろに店に入っても、カウンター席は空くべくもない。7時くらいから我慢強く座っていないと、その恩恵にはありつけないのだった。

 確か、3年生の冬、卒業生を追い出すフェアウェルパーティーで歌う曲を練習した後だったので、多分、節分の頃だと思う。 同じパートの連中7,8人を引き連れて、件の店に8時過ぎに入店した。当然、この人数ではカウンター席は座りようもない。とりあえず、私の入れたボトルがあった。 確か、ニッカのノースランドという安いやつだった。
(後輩たちを連れて行く店はノースランドで、クラスの仲間や女の子と行く店は吉祥寺のニッカウヰスキーの直営店で、そこには「黒の50」と「G&G」が入れてあった。) あの頃は、焼酎ブームのかなり前だったので、水割り、といえばウイスキーだったし、レモンを浮かべたお湯割りなんかも流行っていた。

 で、1年生が全員の分、水割りを作ってくれて、乾杯をしたあとに、おつまみを頼む段になって、福岡県出身のK君(1年生)が、「先輩、あそこのホワイトボードに書いてある、本日のお勧めメニューの『オニオニライス』って食べたことありますか?」と尋ねるのだ。
 「そんなもの聞いたこともないなあ、節分シーズンだし、季節限定メニューかもしれないなあ」
 「そうすね、もしかしたら、『オニオニ』だから、単におにぎりが2つ並んでいるだけかもしれないすでね」
 ものは試し、ということで、早速、「オニオニライス」を注文することした。

 アルバイトと思しきお兄さんに「すんません。焼き鳥の盛り合わせと、野菜スティックとそこに書いてあるオニオニライスを3人前ずつ、お願いします」
 「は~い、毎度ありがとうございま~す」
と言って、彼はカウンターの奥のほうへ注文を繰り返す。
 「おあと、盛り合わせとスティック、オニオニライス各3丁で~す」
 「あ~りがとございま~す。」
 カウンターの中から威勢のいい声がかえってきたので、私たちは、まだ見ぬ食べ物オニオニライスについて、ますます真剣にあれこれとイメージを膨らますことになったのである。

 未知との遭遇を待ちわびるワクワクドキドキの時間が過ぎ(初めて東京ディズニーランドのスペースマウンテンに乗る前みたいだったなあ・・・)て、焼き鳥と野菜スティックが運ばれてきたものの、なかなか肝心のオニオニライスが姿を見せない。いやがおうにもその期待は高まるのだが・・・。

 やがて、例のお兄さんが、カウンターの中に呼ばれて、なにやらヒソヒソ話をしている。やがて、彼が運んできたものは、お皿に玉ねぎの刻んだものがこんもりと盛られた上に、鰹節がパラパラとかかったものだった。

 (これのどの辺が『オニオニ』なのだろう? 第一、ご飯が見当たらないぞ・・・)

 お兄さん、好奇心あふれる私たちの視線を一身に浴びて、やおら、ホワイトボードに向かって、オニオニライスを消した上から何かを書きなぐり始めた。

 「オニオンスライス」

 「?」 確かに、目の前にあるのは「オニオンスライス」だった。

きっと、慌てて、書き間違えたのだろうが、いやはや、なんてこったい。

 実はこの店では、えらく達筆な店員さんがいると見えて、その後も 「オメコボシ」 ⇒ 「ナメコオロシ」 事件が起きるのだが。 この時も一緒にいた1年生のKは、必死になって笑いをこらえて注文をしようかどうか、皆に相談をした。 私は当時、なぜそんなに面白いのか理由がわからず、ひとり、ポカンとしていたが、同じく九州男児(大分県出身)のA君に、耳打ちされて、ようやく笑いの渦に加わったものだった。 

 いくらなんでも、ねえ・・・。

 

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