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人を評価するということ

 「成果主義」という怪物が日本中を跋扈し始めて久しい。
最近になって、ようやく、その功罪のうちの「罪」のほうにも目が向けられてきたようだ。中には、「成果主義」そのものが日本人の気質には合わない、という意見も根強い。

 「目標」を設定して、その達成度によって、それに取り組む「ヒト」を評価しようと、というものだが、客観的に数値化できる目標値だけで、アナログ的な要素の多い人間様の価値を決め付けよう、というのだから、評価するほうも大変なのだ。なにしろ、いきなり成果主義だ。人事評価だ、といわれても、そういう言い出しっぺが、評価をかいくぐってきた人間ばかりではないから、掛け声ばかりで、なかなか実効性のあるものになっていない、というのが実情だろう。

 義理と人情というどちらかといえば、高温多湿の環境に育ってきた人間が、こんなに簡単に、ハートまでアメリカナイズされるとは思えないのだ。 まだ、マクドナルドのハンバーガーを日本人が食べ初めて36年なのだ。

 人材派遣会社から来ている派遣社員のNさん。 人柄は温厚で、手先が器用。 細かいことにもよく気がついて、人情の機微も弁えている人なのだが、今回、その人に辞めてもらうことにした。 まさに苦渋の決断である。 その人は、聴覚に障害がある、というよりも耳が遠い。 補聴器を入れているが、あまり結果を伴わない。 電話の聞き違え、クライアントに声をかけられても、うまく一度で応答できない。 我々は、そのことを知っているので、どうしても、Nさんとの会話は30から40%も声を大きく張り上げなくてはならない。 他人から見ると、喧嘩でもしているように受け取られるらしい。

 決して大きなオフィスではなく、働く人間も限られ、最低限度でやりくりしている現状では、一人、コミュニケーション能力に劣る人間がいると、周囲の人間への負荷がかさんでしまう。 事務室の中に、その人を一人残してはおけなくて、現場にも出かけられない、となると、重大な問題となる。

 「管理職の決断としては、至極当然です。 私がたまみやんさんの立場なら、やはりそうするでしょう。 気にしないでください。 私もかつて、同じように何人もの部下に同じようなことをしてきた人間です。 ご迷惑をおかけしてしまって申し訳ございませんでした。」

 いつも通りに、にこやかに(少し、顔面は紅潮していたようだが)、Nさんは理解してくれた。 もしかしたら、これが管理職としての初めての「らしい」仕事だったかもしれない。

 本人に言い出すまでに決断してから、2週間もかかってしまった。

 「その優しさが、たまみやんさんのお人柄であることは知っておりますが、この判断の遅れはビジネスの世界では命取りになります。 お気をつけください」

 家に帰って、ホッとしたものの、かなり悪酔いしそうである。 
 

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