« 卯月 つめたい風 | トップページ | 花よりトラフグ »

息子の入学式

 今日は息子の入学式。 息子と二人きりで電車に乗るなんて、もしかしたら初めての経験じゃなかったろうか? 東京は予報どおり雨。 車窓から見る桜は盛を過ぎてチラホラと散りだしていて、もう若葉の緑がそちこちに顔を出し始めていた。 わずか50キロほどの距離なのに、自分の家の周囲の桜は昨日の暖かさでようやく満開のときを迎えたばかりというのに。 

 春雨は いたくな降りそ 桜花 いまだ見なくに 散らまく惜しも
                                      (詠み人知らず)

 さて、入学式の会場は、新高輪プリンスホテルの飛天の間。 そう、あの横綱やら芸能人が結婚披露宴をやるところだ。 大学の入学式というと日本武道館(特にマンモス大学の場合)というイメージがあるのだが、どうやら國學院にも全新入生(と保護者)を迎え入れるだけの施設がないらしい。 まあ、自分の頃には子どもの大学の入学式に親が来るなんてことは考えられなかったので、自分としても行くつもりはなかったのだが、今は極当然にそれが行われているらしい。 大学当局によれば、ほぼ新入生の7割の保護者が入学式に来ている、というのだから驚いたものだ。 僕は息子の晴れ姿、というよりも、一度、新高輪プリンスホテルの飛天の間とやらに入ってみたい、という私的好奇心がムラムラと湧き出して、新年度早々だが、休暇を頂戴した次第。

 新高輪プリンスホテルまでJR品川駅からの道筋に雨の中、道案内の職員の方が立っており、「ご入学おめでとうございま~す」と叫んでいた。 入り口から飛天の間までスーツについた雨粒を振り払いながら進んでいくと、室内楽の生演奏や國學院の誇る歴史的な蔵書資料を展示するコーナーなどがあった。 受付も何もなく、そのまま飛天の間に入り、指示されるまま席に着いた。 なんのチェックもなかったので、もしかしたら、全然関係ない人も会場の中にいたりして・・・。 かなり早めに着いたため、父母席の前から3列目。 息子は前から5列目だった。 「飛天の間」も天井にはデカいイシャンデリアが輝いているもののこう椅子がズラリと並べられているだけでは、どこぞの体育館と一緒である。感想はこれだけ(笑)。  

 新入生諸君の身だしなみが、揃いも揃って、というか、99%がダーク系のスーツ姿。 髪を染めている学生も何人かはいたが、髪型もキチンとしていて、まるで就職活動の出陣式みたいな雰囲気だったのが印象的だ。 まあ、今日びの若者といっても、ほとんどの人間が父兄同伴ともなれば、それ位の常識はわきまえている、ということなのだろうか。カジュアルな、というか原宿から抜け出てきたようなファッションの者も2,3名いたが、完全に浮いている。 自分の入学式のときは一応、紺のブレザーを着ていったが、スーツ姿はまれで、大半は普段着と言うかジーンズ姿、なによりも髪型は男子学生のほとんどが長かったり、すなわち、皆が皆、フォークシンガーみたいな出で立ちであったのとはだったのとはエライ違いだ。  

 式の開始までの時間、ステージ横ではブラスバンド部や混声合唱団の演奏があった。 恥ずかしながら、このとき初めて國學院の校歌を耳にした。 詩がとてもいい、曲も雅楽風のメロディーで個性的だ。 そう、つまり「君が代」みたいになんとなく中途半端で、「えっ? このまま終わっちゃっていいの?」みたいな、西洋音楽ばかりやってきた人間には、とても不思議な雰囲気の歌。 一度で覚えてしまい、式の最後の校歌斉唱のときには、結構でかい声で歌えてしまったので、お隣に座ったお母さんから、「OBの方ですか? 親子で同じ大学なんて羨ましいですね」なんて声をかけられてしまった。 なのに、家に帰った現時点では、ほとんど覚えていない。アレ?面目ない! 
 そういえば、自分も母校の入学式では3年間(学部毎だったので都合15回になるが・・・)、こうやってステージに立って、新入生を前に校歌を歌ったっけ。 そして、式終了後に新人勧誘のチラシをもってそそくさと新人狩りの鬼と化したなあ。 

 何の紹介もなく、司会者の開式の辞に続いて「国歌斉唱」。 さすが國學院である。某都立高校みたいに「俺は絶対、歌わないぞ~」みたいに騒ぐ者はなく、かなりの人間が声に出して「君が代」を歌っている。 まるで、大相撲の千秋楽のようだ。 僕は花粉症のマスクをしていたので、例によってクチパクで過ごした。というよりも、どうも、この君が代というやつ、僕の声のキーとはいつも相性が悪く、必ず、途中でひっくり返る。 ひっくり返らないように最初から一オクターブ下げて歌おうとすると、声が出ない。(当たり前のことだが・・・。) 今は「君が代」が国歌として法律で定められているのだが、法律の別記第二にある譜面では単純に下のレから上のレの一オクターブ内に収まっているのだから、本来ならば歌えない筈はないのだが、僕も昔から高校の先生たちに「日の丸と君が代は云々・・・」というのを叩き込まれてきたせいか、わだかまりというか余計な力が入ってしまうのかもしれない。ちなみに僕は絶対音感を持ち合わせてはいないので、今日の君が代が、この別記第二で定められたとおりの調性だったかどうか確かめるべくもない。 成人の男声と女声で同じメロディーを歌う音楽というのは本当は作るのが難しいものだ。

 入学式の学長あいさつの冒頭から 「子どもの大学の入学式に親が付き添うなんて私たちの頃には考えられなかった」と言う話をされていた。  昨年は参列した保護者がロビーからあふれ出してしまったため、 やむなく午前と午後の二部制にした旨のコメントがあった。 

 若木育成会という父母会の会長さんの祝辞で、「國學院の学生は、よく言えば真面目、悪く言うと地味なのだが、社会ではこういう人間は好感を持って迎えられます」みたいなことを言っていた。確かに渋谷という町にありながら、幹線(表通り)に面している訳でもなく、お隣の青山学院のような派手さがなく、ひっそりと大学やってます、みたいな印象は自分の学生時代からあった。 だからという訳ではないけれども、当時、テレビでやすし・きよしの司会で「ライバルなんとか(正確に番組名を覚えていない)」という番組があって、東大VS京大、早大VS慶応みたいにライバルと目されている大学の学生をスタジオに招いてゲームみたいなことをさせて勝ち負けを決める、みたいな内容だったと思うのだが、その番組で、我が母校、中央大学のライバル(?)として登場したのが國學院だったのを、鮮明に覚えている、というよりも「え? なんで?」というビックリのほうが大きかったの印象に残っている。(まあ、後で高校の先輩で國學院に行った人に聞いてみるとそれはお互い様だったみたいですけど。) でも、今日の「真面目で地味」という話を聞いてみて、あらてめて「ああ、そういうことでライバルだったのか~」みたいに一人で合点して、ほぼ四半世紀ぶりの疑問が解決してしまった次第である。 

 式後の記念講演は文学部の松尾葦江教授の「ほんものに逢う」というものだったが、学長の告辞が、あまりまとまりにかけていて、何を言いたいのか、よく判らなかったのに比して、 なかなか面白かった。 冒頭から、「本当はこの大学には来たくなかった学生(いわゆる不本意入学者)も多い、と思いますが」で始まった。 こうして最初に会場をドキリとさせ惹きつける話の進め方、講演の最後を「たまプラーザ(1,2年生の教養課程のキャンパスらしい)で待っています」と結んだあたりは本当に見事。 こういう人の講義は面白いだろうなあ。 自分の大学時代の恩師を引き合いにして、さまざまな角度から、わたしたちが普段、常識と思っていることは実はそうではない、自ら検証して、責任と自信をもって人に話せる学生になって卒業しなさい、みたいなことを仰っていた。 

 その後、学生証を受け取る、たったそれだけのために雨の中を渋谷キャンパスに移動する。 「なんで式の会場で渡せないのかねえ。」といぶかっていたら、なるほどそういうことか。 借り物のホテルの敷地内では不可能な、各サークルによる新勧攻撃が、地味な筈のキャンパス内でかなりド派手に繰り広げられていたのでした。 学生証の交付自体にはものの5分もかからないのに、大学職員が指示する学外への退出するルートの左右に手に手にチラシをもった各サークルの学生諸君が待ち受けている。 まるで、両手に箸をもって流しそうめんを待ち受けているみたいだった。 こうなるといかに学生たちと目を合わせずにここを走り抜けるかなのだが、ルート自体が一人しか通ることが不可能なくらいのスペースなので、数珠繋ぎになって中々前に進めない。 そのうちに、手の中、カバンの中、はてはスーツのポケットへと次々にチラシが差し込まれる始末。 「なんで、父兄までこんな所を通すのよ!」と職員に食ってかかっている元気な母親もいた。 いたく同感したが、まあ、女子大生の熱い視線を一身に浴びる(もちろん、視線の先は息子なのだが)経験もなかなか、近年得がたいものだった。 年甲斐もなく、恥ずかしかったなあ。

 「國學院ってラグビー部があったような気がするんだけど」
 「なんだ、お前やる気あるのか? 確かリーグ戦の2部か3部にいたと思うけどね」

 一緒にラグビースクールでラグビーに親しんだ二人の友人が、中大や東海大学のラグビー部に入っていた。 でも、ラグビー部のなかった高校時代、サッカーのかたわら、週に一度、スクールの手伝いをしていたとはいえ、3年間のブランクを抱えてやれるほど大学ラグビーは、たとえ三部といっても甘くない。 息子もそれは感じているうえでの発言だ。

 大学でのサークル活動について、父親としての忠告は以下のとおり。

 1.必ず何らかのサークル活動を一つ以上行うこと。
 2.大学公認(大学の名前を冠することを大学が正式に認め、部長に正規の教職員がついている)サークルであること。
 3.自分の専攻とは違った活動内容であること。(専門バカにはなるな。ただし、大学院を目指すのであればそれも可)
 4.構成メンバーの学部・出身地などがバラエティに富んでいること。(可能であれば)
 5.必ず4年間続けること。

 息子は、それを聞いて。「ふう~」とため息をついてものだった。 さて、彼がどんなサークルに入ってくれるか、大いに楽しみなところである。

 帰りの電車の中で、もらったばかりの大学の資料に嬉々として目を通している息子をみて、つくづく羨ましい、と思った。 自分のときはどうっだったろう。入学当初は、第3希望の学校だったせいもあり、前述の不本意入学とまではいわないが、合格当初の喜びはつかの間。 入学式の頃には、一浪してもう一度、第一志望にアタック、というように迷いが生じていたのも事実。  大学の中庭でボンヤリとしていたところを、高校の先輩だったMさんに声をかけてサークルに誘ってもらわなかったら5月病になっていただろう。

 息子がほぼ一年をかけて志望を絞り込んだ大学。 他の大学には目をくれず、ということもなかったが、5回もチャレンジして学生証を手に入れた大学。 彼の頭の中には大学の教授陣の顔と名前がいつでも思い出せるらしい。 だから彼は今日一日、とても生き生きと輝いていたのだ。 目標を達成した誇りと自信に満ち溢れていたのだ。 

 こんな風に眩しく息子が見えたことがあったろうか? こんな風に息子を見て、嬉しくなったことは久しぶりだった。 そう、5年生の秋、初めてラグビーの公式試合で、父親が練習試合も含めて一度も経験したことのなかったトライを決めたとき以来ではなかったか。

 本当に羨ましい。 自分にもなにかチャレンジする気持ちが沸々と沸いてきたりしたのだ。 

|

« 卯月 つめたい風 | トップページ | 花よりトラフグ »

「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/132155/9447491

この記事へのトラックバック一覧です: 息子の入学式:

« 卯月 つめたい風 | トップページ | 花よりトラフグ »