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至福の一日~前橋汀子ヴァイオリンリサイタル

 鴻巣市文化センタークレアこうのすで前橋汀子さんのヴァイオリンリサイタルがあった。実は4月23日にもお隣の北本市文化センターで同じ前橋汀子さんのコンサートがあって、そちらのほうがチケットが安い、というよりも以前、このブログで書いた「身近にいい音楽を聴く会」の会員なので自動的にチケットを送っていただいているので、今日は最初は行く予定ではなかった。 昨日、知り合いの文化センターの関係者のかたから直接お話をいただいたので、当日券を求め、予行演習のつもりで行くことになった次第。もっとも、前橋汀子とフランクのソナタの組み合わせとあっては、基本的にはもう行くしかない!かな・・・

 会場に入って「?・・・」

 開演時間を間違えた?かのような人の入りである。いくらなんでもこれは、我らが前橋汀子様をステージにお迎えするには少なすぎるのではないか?(ちょっと不謹慎だが、演奏途中にざっと数えた・・・この数えられるところが凄いよねえ・・・216人) やっぱり、23日の北本のほうが1000円安いものなあ。同じプログラムならそちらに行くのかな。会場はクレアとは比較にならないほどお粗末だけど。そう考えると北本で3,000円というのが高すぎる?

 演奏はクライスラーの「愛の喜び」で始まった。薄紫のドレスに身を包んだ前橋さん。その立ち居振る舞いはいつもの変わらないのだが、このクライスラーはどこか急いでいるというのか、加藤洋之さんの伴奏とも微妙なズレを、チグハグさを感じさせる。あるいは、あまりの客の入りの少なさにやる気をなくして、早く家に帰りたいモードになってしまったのか?

 ところがである。ヴィターリのシャコンヌに入ると俄然、いつもの雰囲気が漂ってきた。揺れるテンポ、熱い情感のたぎる火山島が大小の波間に浮き沈みする。いよいよ本領発揮である。
 フランクに入ると、まさに真骨頂の極みである。もともとヴァイオリンソナタというよりもヴァイオリンとピアノとの真剣勝負みたいな曲だけに、ピアニストとの呼吸も重要なのだが、ヴァイオリンが登場する前のピアノ前奏から、今日の演奏が素晴らしいものになるだろことが予感された。それくらい前橋さんと加藤さんの呼吸がぴったり合って、というのではなく、お互いがよく聴き合って、お互いの演奏を尊重し合う姿勢が随所に見られた。テンポが揺れるのはいつものとおり。春の小川の清流ではなく、透明なゼリーの上をやや温度の下がり、所々に赤い炎が見える溶岩が絡まり合ってうねりながら流れていくような、ネットリとした、しかしながら激しい情熱というかひたむきさを感じさせる演奏である。
 前橋さんほどの大ベテランが、ひたむきに、この曲に立ち向かったら、それが聴いている我々に伝わってこない筈はないではないか。 右足を半歩、ある時は一歩と踏み出して左足を軸足に上体を大きくくねらせながら、ボウイングの度に上下する弓の動きにこちらまで体を揺らしながら、心を翻弄されつつグイグイ惹きこまれていく。
 第二楽章のアレグロの後、思わず会場から拍手がわき起こった、というより、以前からここクレアのお客さんは一曲一曲拍手が出る傾向があるので困惑することが多いのだが、正直、今回は自分も思わずつられて両手を左右に開いてしまってから、「はっ」となって自重したものだ。
 4楽章のカノン風のロンドに入っても、高音の伸びが気持ちがよく響く、琴線に触れる、とはこういうことをいうのだろうか? フレーズ毎、ヴァイオリンとピアノのソロ、合奏部分毎に頻繁に変わるテンポ。しかし、そのギアチェンジの見事さ。圧倒的なミューズ神の権化の演奏である。この演奏だけでも4,000円の価値はあろうというものである。

 数は少ないながらも、大きな拍手。「ブラボー」の声も聞こえた。スタンディングオベーションが起きても不思議でないくらい。現にたくさんのお客様が頭の上の方で拍手をされていたのだから、これは演奏者にとってもシアワセな一瞬ではなかったか?

 水色のドレスに衣装を替えた後半は、普段ならアンコールとして演奏されるような曲がズラリと並んだ小品が9曲。所謂、地方公演用のクラシック入門みたいなプログラム。しかしながら、こういう小品でも前橋流というか、艶やかでネットリとしたポルタメントあり、アレンジありでオリジナルとはかなり趣が違うような印象で面白かった。何よりも僕みたいに前橋汀子フリークの輩には、もう堪りません。一曲一曲、段々と自分の中のボルテージが上がっていって、3年前に聴いたときよりも、かなり興奮してしまった至福のひととき。ドヴォルザークのスラブ舞曲、ブラームスのハンガリアンダンス2曲と続いてきたときには、完全に恍惚の境地状態であった。

 前橋さんもだいぶ機嫌がよかったようで、アンコールを4曲も披露してくれた。やっぱり、見た目にお客さんが少なくても、あれだけ大きな拍手とブラボーがかかると、嬉しいものだろうな。
 ①亜麻色の髪の乙女(ドビュッシー)
 ②メロディー(チャイコフスキー)
 ③スペイン舞曲(ファリャ)
 ④美しきロスマリン(クライスラー)

 15時に始まったコンサートは終演が17時20分近かった。休憩時間が20分だったから正味2時間演奏していたようで、さすがに最後の方は疲れちゃったかなあ・・・というか緊張感がなくなったみたいだが、こんなに素晴らしい演奏が4,000円で楽しめるなんて、やっぱり良かったなあ。大満20080412_01足の一日であった。

  クレアこうのすの音響もいろいろな場所で聴く度に違ってきこえるのだけれども、今日のはベストポジションだったかな。ヴァイオリンの低音から高音まで、とても瑞々しかったし、ピアノの音とのバランスもよかった。23日の北本にも出かける予定なので、いろいろな意味で比較するのが楽しみである。

★気になったこと・・・
①お客さんの少なさは、23日に北本で同様のコンサートがあり、そちらのほうが1,000円安いことを考えても、どうなのだろうか? やはりPR不足?
②花束の贈呈がなかったのだけど・・・なんかいきなりアンコールが始まってしまってビックリしました。
③4,000円も取るような演奏会なのだから、もう少しプログラムの装丁を何とかならないだろうか・・・
④クレアこうのすでのクラシックコンサートはあまり回数は多くないのだが、(ホール自体は響きもよく、客席の床にも木を使うなど、どちらかといえばクラシック、アコースティックな演奏会に向いていそう。) 演奏途中で拍手が入ることが多くて、とても気になる。 クラシック鑑賞教室みたいな企画を開いてみてはどうだろうか? 今日も会場内でペットボトルで水を飲んでいる人がいたし・・・。

 

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